赤髪のシャンクス――その名を聞けば、ほとんどの海賊が震え上がる――そんな男にも、唯一勝てない相手がいた。愛娘のなまえだ。

「お父さん、きらい」
「なっ…!」

 なまえが嫌いなピーマンを無理に食べさせようとした結果、こうなってしまった。俺の事まで嫌いとは……これは…参った……。

「おい、なまえ。悪かったよ」
「ピーマンは絶対食べないもん」
「ああ、食べなくていいからこっちに座れ。こっち」

 歩いてきたなまえが、俺の左隣へ座る。……左といえば、なまえが物心ついたばかりの頃に、確か俺に聞いた事があったな。

『おとうさん、ひだりのうでは?』
『ん? ……この左腕か?』
『うん』

 なまえはあの日、俺の左腕がない事を疑問に思っていた。俺は説明した。

『この腕はな、大切な“友達”を助けた時にな、失くしちまった』
『ともだち、』
『そうだ。なまえ……お前もいつか、友達を作れ。親友をな』
『しん、ゆう?』
『ああ。親友だ。腕の1本や2本くれてやってもいいと思えるような、かけがえのない友達をな』

 あの後、「しんゆういっぱいつくる!」とか言い出したなまえは、船員皆に親友になれと言って誘ってまわった。今じゃ船員全員が、なまえの親友って事になっているんだろう。きっと。

「なまえ、ここに座れ」

 自分の足の間になまえを座らせ、右腕でしっかりと抱きしめる。なまえは大人しく俺の腕の中で、ルウからもらった小さめの骨付き肉を頬張っていた。

「なまえ」
「なに?」
「腕1本だってな、大切な人を抱きしめる事が出来る。こうやってな」

 頭を優しく撫でてやると、こくりと頷いて続きを食べ始めた。



「お頭、今日久々にいい事言ったな」
「赤髪のシャンクスも、愛娘にゃ弱ェってこったな!」
「うるせェよ……それより、なまえがピーマン食えるような料理作ってくれ」
「原形なくなるくらい刻んで入れるしかないぜ。なまえはすぐに気付くからな」


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