私の大好きな、砂の国・アラバスタ。でもこの国を好きな理由は、生まれ育ったからだとか、王女だからとか……そんな理由だけじゃない。私の大好きな人、大好きなものが、たくさん詰まっているからだ。

「ビビ」

 今私の名前を呼んだこの人も、私の大好きな、大切な家族。

「なまえ姉さん」

 ずっと姉妹仲良く、育てられてきた。姉さんには今まで、バロックワークスへの潜入などで酷く心配をかけてしまった。それでも、帰ってきて顔を合わせた瞬間、ただ一言“無事でよかった”と、抱きしめて迎えてくれた優しい人。

「おかえりなさい」
「ふふ。式典には出ないで、ビビも来ればよかったのに。コーザと久し振りに会えたのよ? 無理に出なくてもいい式典だって、お父様も言ってたじゃない」
「ううん、今回はスピーチもあったし……まだ街の復興も完全ではないわ。だから、式典には出たかったの」
「そう。まぁ、コーザにはまたすぐ会えるわね」
「うん」

 ひとつ頷いてから髪を結おうとするが、その手を姉さんに止められる。

「なまえ姉さん?」
「貸して、ビビ」
「はい。なまえ姉さん」

 髪飾りを手渡すと、姉さんが綺麗に髪を纏めてくれる。髪を姉さんに結ってもらうのは、本当に何年振りかしら。温かく懐かしい手の感覚に、思わずにやけてしまう。

「ふふっ」
「なぁに? ビビ、笑ってるの?」
「なまえ姉さん」
「ん? ……はい、出来たわ」
「ありがとう」

 お礼を言って立ち上がると、振り向いて姉さんにぎゅっと抱きつく。

「ビビ?」
「姉さんが無事で、本当によかった」
「……ビビ…」
「私、ルフィさん達といる間も、姉さんが心配で…この国が、心配で……!」
「ええ、分かっているわ」

 優しく頭を撫でてくれる姉さんに甘えて、しばらく泣いてしまった。泣き止んだ頃には私は酷い顔で、ちょうど部屋に入ってきたイガラムに心配される。姉さんには笑われてしまったし……。

「ビビ。あなたが気負うことなんて、何ひとつないのよ」
「え?」
「この国は、強いわ。あなたも、お父様もね」
「……うん!」


 優しくて強い、自慢の姉


「イガラム、お腹が空いたわ」
「しかしなまえ様……先程コーザと一緒に、街で昼食を済ませたばかり…」
「あんな小さなランチ、おやつよ。テラコッタさん、軽めのランチをお願い!」
「……あれが、おやつですか…」
「なまえ姉さんたら…まるで、ルフィさんが居るみたいだわ」
「そうですね、ビビ様。彼らとの賑やかな時間が、一瞬蘇るようだ」
「ええ、イガラム。……平和ね」


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