今、私の自慢の娘のなまえが、野蛮なゴリラに襲われそうになっているところなの。新ちゃんと一緒にお留守番をさせていたら、野良ゴリラが訪ねて来たようね。怯えて逃げ回るなまえと、しつこく追い掛け回すゴリラ。許せないわ。

「なまえちゃん! 待ってくれよ、お妙さんはどこなんだい!?」
「だ、だから出かけましたってば! お願いだから、追いかけてこないでください!」
「うちの娘に何してくれてんだ、ゴリラァア!」
「ギャァァァってお妙さん!」

 私は結婚して娘も居るというのに、このゴリラ…もとい近藤さんは、未だに付き纏ってくるのよね。最近はなまえも付き纏われているようだし…。

「警察に通報しようかしら…」
「姉上…そのゴリラも一応、警察機関の局長ですよ。それに近藤さんの目的はあくまで姉上で、なまえではないです」
「新ちゃん。今度からあのゴリラが来たら、侵入される前に要塞モードにするのよ。なまえにまで被害が及んだら可哀相だわ」
「はぁ…分かりました」

 ゴ…近藤さんを追い出…帰らせた後、早速買ってきた食品を取り出して、料理に取りかかろうとする。そうしたらなまえが隣に立って、お魚やお肉の容器を開け始めた。

「なまえ?」
「手伝うわ、お母さん」
「まぁ…ありがとう。なまえ」

 そう…この子も、料理を手伝ってくれる年頃になったのね。お母さん嬉しいわ。

「じゃあ…私はお魚を焼くから、なまえはそのお肉を生姜焼きにできるかしら?」
「うん! 任せて!」

 得意げに笑って隣でお肉を焼く姿を見て、とても微笑ましい気持ちで頭を撫でてやる。いつかもっといろんなお料理ができるようになったら、なまえにもお母さん特製の卵焼きを教えてあげるわね。



「まぁ。美味しそうな生姜焼きね」
「本当だ! なまえ、料理が上手くなったね」
「さすが私の娘だわ。なまえ!」
「…いや、これは決して姉上に似たわけでは…」
「何か言ったかしら? 新ちゃん」
「……いえ」


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