ある日突然一護の前に現れたのは、黒猫・夜一……によく似た顔つきの、毛並みの綺麗な白猫だった。その猫もまた言葉を発し、その動きは優雅で美しいもので。

「なんだ? 夜一さんじゃねぇのか」
「あなたが、黒崎一護?」
「……え? 浦原さん、この白猫は…」
「あぁ、その子はっスね…」

 喜助が答えようとすると、一護の後ろから聞き慣れた声が響いた。

「ん? 来ておったのか」
「夜一さん!」
「久し振りじゃな。って、ん……?」

 夜一の視線の先には、にこにこしながら白猫を撫でようと手を伸ばす喜助の姿。その瞬間、夜一は喜助の手を踏みつけた。

「……痛いっスよ、夜一さん」
「儂のなまえに気安く触るな、喜助」
「なまえ?」

 全くわけが分かっていない一護は、首を傾げる。どうやらこの猫は、なまえという名前らしい。

「姉さん」
「姉さん!?」

 一護が振り向いた先には、肌の白い女。顔は夜一に少し似ている。

「よく来たの、なまえ」
「姉さん、会いたかったわ。現世との行ったり来たりで、なかなか会えなかったものだから」
「すまんの。今日は泊まっていけ。喜助が儂となまえに、晩飯を振る舞いたいらしい。のう、喜助?」
「……勘弁して下さいよ、夜一さん」

 喜助は財布を開きながら肩を落としたが、夜一はなまえを帰そうとはしなかった。諦めた喜助は、泣く泣く寿司の出前を頼む事になったのだった。
 一護は、夜一やなまえと話した後に、喜助に軽く挨拶をして帰っていった。

「姉さん、本当にご馳走になっていいのかしら……突然訪ねてしまったのに」
「構わん。食え、食え」
「……夜一さん。まぁ、なまえさんがここに来てくれたのも久々ですからね。どうぞ食べてください」
「それじゃあ…いただきます」

 食べている間もなまえから目を離さずデレデレしている喜助に、夜一から鋭い角度で蹴りが入ったのだった。

「い……痛いっス……」
「さぁなまえ、喜助の分も食ってやれ」
「え、ダメよ姉さん」
「なまえさんは優しいっスね……」
「なまえ、喜助側じゃなく儂の隣に座れ」
「? 分かったわ、姉さん」
「…………夜一さん…」
「フン。人の妹に鼻の下を伸ばしおって」
「……すみませんでした」


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