今日はアルバイト初日!
 お客さんも結構入ってくるし、レジも忙しくなりそう。さっき開店前に店長に習いながら少し練習したし、これが人生で初のバイトというわけでもないけれど…初日から新人バイトにレジを任せる、とは…?
 お札とか数えるの遅いんだよなぁ…大丈夫かな。

「あ? なまえじゃねェか」
「え?」

 早速レジへ来たお客さんから突然声をかけられて顔を上げると、そこには見慣れた顔と、買い物かごいっぱいのマヨネーズが。

「土方さん!」
「そういや山崎が言ってたな。なまえがバイト始めるってよ」
「へー、退が?」

 話しながらレジを打ち終え、マヨネーズを袋に詰めて手渡すと、土方さんは軽く微笑んで出て行った。ふと話し声が聞こえて振り向けば、これまた見慣れた人物が店長に挨拶をしている。

「はい、分かりました! 今日から入るんで! よろしくお願いします!」
「…退」

 私の声に気付いた退はビクッと肩を震わせてこちらを向き、ダラダラと冷や汗を流しながら苦笑いをした。

「あー…これはその、別になまえが心配だったとかじゃなくて! あれだから! ここの店に桂がよく出入りするらしくて、潜入捜査に来ただけだから!」
「……要するに、心配だったのね」
「…はい」

 必死に言い訳する退を見て少し笑うと、退も照れたように笑った。



「あれ、なまえじゃねェか。偶然だな。こんな地味な奴とバイトですかィ?」
「隊長! なんでここに!」
「あ、沖田さん」
「…なんて、実は土方さんからここでなまえが働いてるって聞いたんでさァ。ちょっと顔見ようと思ってねィ。オメーはさっさと屯所に戻って、仕事しろよ山崎」
「仕事サボって人の妹ナンパしに来てる隊長には言われたくないです!」


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