「はは……曇り空、か」

 今朝は体調も良くて、今日は久し振りになまえを甘味処にでも連れていってやろうかと思っていたんだが……まさか昼になってから、体調も天気も崩れてしまうとは。

「父様、お体は?」
「ん……ああ、だいぶ良くなった」
「本当?」
「ああ、大丈夫だ」

 笑って見せるが、なまえは下を向く。悲しそうに、切なそうに。

「どうしたんだ、なまえ。どこか痛むか?」
「……父様は、嘘つきです」
「俺が、嘘つきだって?」

 なまえはこくりと頷き、顔を上げて俺を見た。その目は少し潤んでいる。

「本当は、大丈夫じゃないんです。父様はいつもそうです」
「なまえ?」
「卯ノ花隊長が、おっしゃっていました。父様は今日は、安静にしなきゃならないって」
「……卯ノ花隊長……なまえにまで…」
「違います。私が隊長に、直接伺ったんです」

 その言葉に驚く。なまえには何ともないと伝えるように、お願いしてあるはずだ。卯ノ花隊長がなまえに、そんな話をするはずはない。きっとなまえが、卯ノ花隊長に無理を言って聞き出したのだろう。

「なまえ、黙っていたのは悪かった。だが…」
「分かっています」
「え?」
「私に心配をかけないようにと、体調が悪くても隠している事は」

 ……まさか、そこまでなまえが気付いていたなんて。上手く隠せているとばかり思っていたが、やはりなまえには隠し事など通用せんのだな……さすが俺の娘だ。

「……悪かった」
「もう、隠し事はしないでください。父様……父様と私は、たった二人きりの家族なんですから」

 そう言って俺の手を握るなまえを、そっと抱き締めた。



「浮竹隊長、お体の方は?」
「卯ノ花隊長。おかげさまで……」
「なまえには……本当の事を言いました。あの子はすでに、全て知っていましたよ」
「はは…そのようで。何ひとつ、隠せてなんかいませんでしたよ」


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