なんだか知らねぇが、今日はやけになまえの機嫌が良い。なまえってのは俺の妹で…まぁ、簡単に言い表すならチビだ。背丈と体格は俺の半分くらいだし、おまけに年も離れてる。いや……背丈が半分ってのはさすがに言い過ぎか?
 とりあえず、隣で朝からニヤニヤしやがって…すげぇ気になる。

「おい、なまえ」
「なに? 兄さん」
「……何そんなニヤついてんだ」
「えー…ふふっ」

 向かい側に座り直したなまえが、再びにやける。なんなんだ、本当に。

「んだよ、何かあったのか?」
「だって今日は、兄さんが居るんだもん」
「あ?」
「今日は兄さんの任務もないし、現世にイタズラしに行かないし」
「………」

 気が抜ける。そんな事でコイツは嬉しそうにしてんのか?
 確かに、現世で死神達とやり合って怪我して帰った時は、酷ぇ顔で泣いてたが。俺が居るのがそんなに嬉しいのか?

「……」
「兄さん」
「……何だよ」
「大好き」
「ああ?」

 あからさまに“何言ってんだテメェは”というオーラを出すと、急に俺に抱きついてきた。

「っおい、離れろ!」
「……兄さん」
「あァ!? 今度は何だよ」
「好き!」

 離せとは言うものの、他の奴等のように突き飛ばして退かすわけにもいかず。仕方なく、再び抱きついてきたなまえの頭を、出来る限りでそっと撫でてやった。

「ったく……おら、いい加減退け」
「……」
「泣きそうな目で見んな!」
「兄さ、」
「俺にだって、お前は必要だ」
「………」
「俺の“家族”は、なまえだけだしな」

 もう一度だけ今度は少し乱暴に頭を撫でると、なまえがまた嬉しそうににやけ始めた。



「兄さ……ん…」
「あ、オイ! 寝るなら部屋行って寝ろ!」
「………」
「ちっ……面倒くせーな…」

 結局、部屋へなまえを運ぶ羽目になったが。……それを嫌だとは思わねぇのは、俺にとってもやっぱりコイツが大事っつー事か。


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