この僕が、先程得た情報と併せての研究中だというのに、外では何やらバタバタと騒がしい。迷惑この上ないな、まったく……一体誰だ。

「何だ? さっきからバタバタと…」
「あ、ザエ…「待てコラァ!」ぎゃっ」
「………」

 目の前には、僕に気付いて立ち止まったなまえと、その首根っこを掴んで捕まえるグリムジョー。何だこの光景は。……ただ、さっきからうるさいのは間違いなくこいつらだという事だけは確信した。

「テメェ、なまえ! 俺から逃げようなんて100年早ェんだよ、バカが!」
「痛っ! 降ろしてよ、猫じゃないんだから」
「あァ? お前が猫なんて可愛らしいモンにゃ見えねェがな」
「失礼な……ザエルアポロ、何か言ってやってよ」

 僕はといえば、自室のドアを開いた瞬間のまま真顔で固まっていた。なんてくだらない。まず、喧嘩の原因は何なんだ?
 何故こいつらは追いかけっこなどしているんだ。第一、なまえとグリムジョーは恋人同士……何故こんなにも毎日喧嘩をしているんだ?

「とりあえずなまえから離れてくれ」
「あァ?」
「認めたくはないが……僕も一応これの双子の兄として、助ける義務があるようだからね」

 グリムジョーを剥がして解放してやると、なまえは素早く僕の背後へ隠れる。グリムジョーは僕越しになまえをたっぷりと睨みつけた後、舌打ちをして去っていった。
 なんて面倒な役回りなんだろうか、兄というものは。

「ありがとう、ザエルアポロ」
「……痴話喧嘩もいい加減にしてくれないか? 僕にも研究というものが…」
「双子の私より、実験台の方が可愛いの?」
「………」

 そういう聞き方をされると、まあなまえも可愛くなくはないか、と思う。実験台はもちろん可愛いが、心から愛でたくなるようなものではないからね。

「……あとから彼に謝っておいてくれよ。僕は面倒に巻き込まれたくない」
「気が向いたら謝ります」
「必ず、だ!」

 分かったね、と釘を刺すと、なまえは面倒そうに部屋を出ていった。

 その僅か数分後――。

「おいなまえ、手ェ離せ!」
「いいじゃない、手を繋ぐくらい! 藍染様、どう思いますか?」
「グリムジョー。なまえを泣かせるような事があれば、容赦なくNo.6から外れてもらう」
「………チッ……繋ぎゃいいんだろ」
「ふふ、藍染様大好き」
「………」

 すっかり仲は直っていた。……前々から思っていたが、藍染様はなまえに些か甘過ぎやしないだろうか。


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