隊舎の縁側で無防備に昼寝してんのは、俺の妹のなまえだ。人が忙しく書類整理だの任務だのと走り回って帰ってくれば、毛布の1枚も掛けずに寝ていやがる。

「ったく…仕方ねえな」

 毛布を掛けてやると、なまえがぱちっと目を開く。小さな手が僅かに動き、毛布の端を握った。起き上がって俺の顔を確認すると、微かに笑ってくるりと毛布に包まる。

「おいおい、まだ寝る気か? オメー」
「んー…お兄ちゃん……」
「いいから起きろよ、なまえ。コイツも居るからよ」

 顎で朽木の方を指すと、なまえがそちらを見て飛び起きた。

「るるる…ルキアさん!」
「へっ!?」
「なまえの目標なんだよ、朽木は」
「もっ、目標!? 私が?」

 目を輝かせて朽木を見つめるなまえは、俺には見せた事がねえような尊敬の眼差しを送っていて。

「海燕殿、私はどうしたら……」
「あ? ああ…オメーもここでメシ食ってけ。なまえも喜ぶからな」
「本当? お兄ちゃん!」
「ああ、本当だ」

 なまえの頭を優しく撫で、部屋へ上がるよう朽木に目配せする。朽木はゆっくりと襖を開けて中へ入ると、ちょこんと端っこに座った。その隣になまえを座らせて、2人と向かい合うように俺も座る。

「おい朽木、もっとリラックスしろ。リラックス」
「そうですよ、ルキアさん! あ、お酒飲みますか? お兄ちゃん、お酒!」
「あ? 俺が酒を用意すんのか?」
「……私が持ってきます」
「そ、そんな……なまえ殿、海燕殿!」
「あー、朽木。なまえの事は呼び捨てにしてやってくれ、その方がアイツも喜ぶ」

 そう言って胡座をかき、なまえが小走りで持ってきた酒を一口飲んだ。



「なまえ、朽木に酌してやれ」
「はい!」
「あ、ありがとう。なまえ」
「ル……ルキアさんから……呼び捨てっ…!」
「なっ――か、海燕殿! 泣かせてしまったではないですか!」
「はは、気にすんな。嬉し泣きだ」


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