ある日私が家に帰ると、可愛い可愛い我が妹が、私の大切な大っっ切なプリンを、それはそれは美味しそうに食べていました……。
 食べるタイミングを逃したため、2日前から楽しみにしていたプリン。それがひとくち、またひとくちと…妹の口へ消えていく。私はその場から動けなくなった。

「あ! お帰り、なまえ!」
「あ、うん。ただいま…神楽、あなたは今何を食べているのかな」
「冷蔵庫にあったプリン」
「……"なまえ"って、書いてなかった?」
「ああ、そういえばフタに書いてあったかもしれないネ!」

 私と話している間も、神楽は手と咀嚼を止めない。絶対食べられちゃうと思って名前を書いておいたのに、それに気付いていながら食べたとは…この子をちょっと甘く見すぎていたわ。

「なまえ、最後のひとくちヨ」
「え?」
「お姉ちゃんのプリン勝手に食べちゃったから…最後のひとくちは譲るアル!」

 スプーンに掬った最後の大きなひとくちを差し出され、素直に食べる。甘いプリンの味が、口の中いっぱいに広がっていった。

「ありがと、神楽」
「私こそプリン…ごめんアル」
「いいよ、最後のひとくちくれたから」

 最後のひとくちって、一番美味しいひとくちでしょ?
 そう言うと神楽もにっこりと笑い、もちろんネ!と頷いた。



「今度銀ちゃんに買わせて返すアル」
「おーい聞こえてんぞ! 銀さん金欠なんですけど!」
「私、なまえにプリン買ってあげたいヨ」
「……そんな目で俺を見んなァア!」


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