「あれ、お兄ちゃん?」
「おや…なまえ。まだ起きていたんですか?」

 夜中に目が覚めてしまい、リビングへ行ってみると…人影が。ドアを開けると、兄がまだ起きていた。

「感心しませんね、こんな時間まで起きているのは。体に良くないですよ」
「大丈夫だよ、目が覚めただけだし」
「まったく……風邪を引きますよ。今夜は少し冷えますから」

 呆れたような笑顔で言いながらも、温かいココアを用意してくれる。兄は眼鏡をかけて、何かの書類を書いていた。もしや、マフィアのお仕事関係のものだろうか。好奇心から少しだけ身を乗り出して覗き込むと、こら、と大きな手で目隠しをされてしまった。

「さぁ、なまえはもう休んでください。早くしないと千種を呼んで、なまえが寝るまで監視させますよ」
「……眠くない」

 そうして嘘をついた時ほど、タイミング悪く欠伸が出てしまうもので。「ほら、眠いんでしょう」と背中を押され、部屋へ行くよう促されてしまった。仕方なく席を立ってリビングを出るのと同時に、閉じたドアの向こう側から、くすりと微笑む兄の声が聞こえた。

「明日の朝は、なまえが好きなフレンチトーストにでもしましょうか」



(別室のドアの隙間から)

「なーんかなまえの奴、ニヤけてたびょん」
「フレンチトーストの何がそんなに嬉しいんだろ…」
「犬、千種。もう寝なくちゃ……骸様も、もう休むから…」


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