最近、なまえの様子がおかしい。ウチが話しかけても素っ気ない返事だし、飴を分けてあげても、喜びはするものの……ほぼ無言。
 ウチ、なまえに何かしたか…? なんて、考えても分かるはずもなかった。

「なまえ、飴食べていいよ」
「……うん」

 やっぱり。俗に言う、お年頃というやつなのだろうか。反抗期なのか? ここはきっと父親として、しっかり話をするべきなんだろう。作業の手を止め、部屋へ戻ってもう1度なまえに話しかける。

「……なまえ」
「………何」
「何で最近話さないんだ、ウチと。飴だって、前は喜んで食べてたのに」
「………」
「なまえ」
「…………の」

 俯いたなまえの口が僅かに動いたが読み取れず、もう一度聞き返す。すると、なまえが目に涙を溜めて言った。

「寂し、かったの」
「……え」
「お父さんはいつも、モスカモスカモスカ……私より、機械やモスカの方が可愛いの?」
「!」

 そういえば、なまえが生まれる前も生まれてからも、ずっとモスカをいじってた。全く遊ばなかったわけじゃないけれど、母親と比べたら、なまえと2人で居た時間はかなり少ない。
 まさか自分の仕事が、なまえとの距離を広げてしまっていただなんて。そしてその事実に、なまえ本人に言われるまで気づかないだなんて。

「……なまえ。ウチには、なまえや母さんより大事なモノはない」
「……お父さん」
「ウチは…なまえの事も、母さんの事も、……愛してる」

 そう言ってなまえを抱き上げて、小さな頬にキスをした。


 寂しさゆえの、反抗期


 私はお父さんが大好きよ。でも、また構ってくれなくなったら、いつでも反抗期になってやるんだから。


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