僕が部屋に戻ると、そこには妹のなまえが居た。なまえの部屋はこの部屋の隣。なのに、何食わぬ顔で僕の机に向かって勉強している。ちゃっかりヘッドホンまで使ってるし…。
「なまえ?」
ぽんぽんと肩を叩いて呼ぶと、ぴくりと肩を震わせて振り向いた。ヘッドホンを取り上げて、溜息を吐きながらベッドに座り込む。
「なんでここで勉強してるんだ。なまえの部屋は隣だろ?」
「そうだよ」
「そうだよって……」
また黙々と勉強をし始めるなまえを見て、疲れているから早く眠りたかったのに……と、癖のように腹の辺りを撫でさする。
「……白蘭さんに言うよ? なまえが自分の部屋使ってないみたいだから、没収しちゃってくださいって」
「やだ! それはだめ」
「じゃあ部屋に戻って。僕寝るから」
「それもやだ」
何を言っても、嫌だの一点張り。望みは何だと聞いてみる。
「じゃあどうしたらいいんだよ」
「……勉強教えて」
「え?」
「宿題。冬休みの……提出期限とっくに過ぎてるけれど、まだ終わってなくて」
呆れたもんだ。冬休みが明けてから、もう1週間以上経っているのに。まだ終わってないんだ。
「仕方ないな……少しだけだよ」
「うん、ありがとう」
疲れていて腹痛もするっていうのに、断りきれずに妹に宿題を教える約束までしてしまうとは。再びキリキリし始めた腹を押さえ、なまえの隣で落書きだらけのノートを覗き込むのだった。
「お兄ちゃん、何を言ってるの?」
「……僕は普通に教えてるつもりなんだけど…」
「あれ? 勉強中なのかな、なまえチャンは」
「白蘭さん、仕事は終わりましたか?」
「……今からやるんだよ」
「……終わってないんですね」
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