広い部屋の中、真新しいソファの上で ぽふぽふと跳ねて遊んでいるのは、オレのたった一人の娘、なまえだ。

「なまえ、ソファで跳ねるな。埃がたつだろう」
「お母さん! このソファ、すごくふかふかする!」
「……リボーンが送ってきた物だからな。きっと、どこか有名なメーカーの物だろう」

 届いたばかりの新しいソファに、大人しくしていろと言ってなまえを座らせる。その隣に静かにオレも座って、コーヒーを一口含みながら、読みかけの英字雑誌を再び開いた。

「なまえ、どうした?」

 雑誌を読んでいると、なまえが肩へともたれ掛かってきた。具合でも悪いのかと問い掛けると、ひとつ大きな欠伸を漏らす。

「ねむ……」
「……また夜中まで起きていたのか? 早く寝ろとあれほど言ったのに」
「だって今日は、コロネロさんが来る日じゃない。昨日から楽しみだったの」
「…そうか」

 そういえば少し、いつもよりもめかし込んでいる気がする。……なまえの初恋というやつか。まさか相手がコロネロだとは、なんとも複雑だ。

「コロネロさん、甘い物は好きかしら」
「……さあな」

 るんるんと鼻歌を歌いながら楽しそうに茶菓子やら何やらの準備をし始めるなまえを見て、つられるように微笑んだ。



「コロネロさん、お久し振りです!」
「おう、大きくなったな! なまえ」
「中へ入れ。なまえが焼いた菓子もあるぞ」
「なまえはもう料理も出来るのか?」
「す……少しだけです…!」
「そうか、すごいな!」


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