「なまえ姉ちゃん、なまえ姉ちゃん!」
「なに? 犬」

 弟の犬が、何やら興奮気味に後をついてくる。私は皆の夕飯を作っていて鍋とテーブルを行き来しているのだが、その後ろをぴょんぴょんとついてくるのだ。

「もう、何? つまみ食いはダメよ」
「む……違うびょん!」
「じゃあ、なぁに?」

 卵をかき混ぜながら聞くと、犬は頬を掻きながら私の隣へ寄ってきた。

「今日はハンバーグれすか?」
「そうよ。好きでしょ、犬」

 それからこれは卵焼き、と言いながら溶き卵をフライパンに流し込む。そしてその工程を、犬は隣で大人しくじっと見つめていた。

「犬、骸は?」
「骸様は食事まで休むって……あ!」
「ん?」
「それ伝えに来たんらった! 俺、なまえ姉ちゃんが料理してんの見てたら忘れてたびょん! ま、いーや。伝えたし!」
「もう、しっかりしなさい。お皿出して、犬」
「分かったびょん!」

 へらっと笑ってまた後ろをついてくる犬に手伝いを頼むと、危なっかしい手つきでお皿をたくさん運んでくれた。

「これでいーんらな!」
「うん。あとは皆を呼んできてね」
「っひゃー! やっと夕飯ら!」

 嬉しそうに走っていく後ろ姿を見送って、テーブルに皆のお皿を並べる。きっとこの大きめのハンバーグは、真っ先に犬が取るんだろうなと考えながら、チーターチャンネルで素早く戻ってきた犬に微笑んだ。


 皆揃っていただきます!


「そんなに急がなくても、ハンバーグは逃げないわよ」
「この大きいのは俺のらー!」
「クフフ……やはりなまえの方が料理上手ですね、千種?」
「……これから全部、なまえが作ってよ。お弁当も」
「いいけど、私が作るお弁当は犬贔屓になるわよ」
「なまえ姉ちゃん大好きら!」


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