今日は日曜日、ここは沢田殿の家です。なぜ沢田殿の家に居るかというと、今日は沢田殿のお母様に、なまえ姉さんのために料理を習う日だからです。

「あの……これは、砂糖をもっと入れても?」
「んー、ちょっと甘すぎちゃうかもしれないわ。少しお塩を振っておきましょうか」
「はい!」

 今作り方を習っているのは、なまえ姉さんの大好きな料理、肉じゃが。なまえ姉さんは日本での暮らしが長いため、肉じゃがが大好きで得意料理だ。

 けれど最近は、なまえ姉さんに任務が頻繁に入るようになり……拙者の替わりに親方様についていったりもしているようなので、忙しいなまえ姉さんのために、帰ってきたら肉じゃがを作ってあげたい。そう言ってお願いしたら、沢田殿のお母様が、拙者の料理の先生を快く引き受けてくださったんです!

「そうそう! 味付けはもう完璧ね」
「ほ、本当ですか?」
「ええ。なまえちゃんも喜ぶはずよ」
「……ありがとうございます!」

 美味しく作れて、味付けもお墨付きだし見た目もいい。後は家に帰って、一人で作れるようになれば完璧だ。

「よし……!」

 2日後には、なまえ姉さんが帰ってくる。それまでに練習しておこう。そう意気込んで、沢田殿の家を出た。

―――

「ただいま、バジル!」
「なまえ姉さん!」
「あら? 少し逞しくなったかしら」
「ああ、ずっと沢田殿の修行を手伝っていましたから」
「……そう。なんだか頼もしいわ」

 くすくすと笑いながら、なまえ姉さんがコートを脱ぐ。姉さんが着替えをしに部屋へ戻っている間にキッチンに立つと、すぐに姉さんが戻ってきて、キッチンへと入ってきた。

「あら、バジル? いいのよ、ご飯なら私が……」
「いえ。今日は拙者に作らせてください」
「でも」
「なまえ姉さんは、部屋でゆっくり休んでいてください。今日は拙者に任せてください!」
「……なら、お願いしようかしら」

 にっこり笑ってエプロンを脱いだなまえ姉さんは、部屋へと戻っていった。

「さて……いよいよ本番、ですね!」

 ――なまえ姉さんが拙者の肉じゃがに感激して泣き出すまで、あと少し。



「バジルの肉じゃが、美味しいわ」
「本当ですか? なまえ姉さん!」
「ええ。明日のお弁当のおかずにも、お願いしちゃおうかしら」
「はい、頑張って作ります!」

「ふふ。少し家をあけている間に、バジルにすっかり追い越されちゃったわね。料理の腕」
「そんな! 拙者はなまえ姉さんの料理が、世界一だと思っています!」
「ありがと、バジル」


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