「なまえ、俺だ!」

 突然了平の家から電話が……と思ったら、電話の相手は弟のコロネロだった。

「もう。了平の家からかけてこないで。了平の家からは滅多にかかってこないから、何かあったのかと思ったわ」
「お、おう……悪かったな、コラ!」
「で、用事は?」
「ああ…なまえ、明日空いてるか?」
「別に用事はないけど?」

 カレンダーを確認しながら、明日は予定がない事を告げる。ホッとしたようなコロネロの声が、電話の向こうから聞こえてきた。

「なぁに、どうしたの?」
「いや……なまえと久々に会い……や、やっぱり何でもねぇぞ。コラ!」
「……何、私に会いたいの?」
「ち、違っ」
「照れなくてもいいわよ」

 必死に否定するコロネロに笑いながら話しかけると、また恥ずかしそうな声が返ってくる。照れ隠しに咳払いをひとつすると、コロネロは少し声を張った。

「も、もう切るぞ! コラ!」
「はいはい、分かったわ」
「……また明日連絡する」
「ふふ。はいはい」
「……いつまで笑ってんだ、コラ」
「ごめん、ごめん! 明日ね」
「……おう」

 小さく返事をしてコロネロが電話を切り、続いて私も電話を切る。さて、明日は久々にまた少しからかってあげようかしらね。



「ふふ、久し振り」
「……まだ笑ってんのか? コラ…」
「だってコロネロ、可愛いんだもの」
「………フン」
「もう、強がりね。会いたかったって素直に言いなさいよ」
「絶対言わないぜ、コラ」


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