よく晴れたある日、俺は娘のなまえを連れて外を散歩していた。これは、任務ばかりでなかなか遊んでやれなかったなまえの希望だ。久々の休みにどこへ行きたいかと聞くと、パパと外を歩きたい、とだけ言った。

「う゛おぉぉい、なまえ! あんまり走り回ると転ぶぞぉ」
「パパ、早くー!」
「……ったく」

 数メートル先で大きく手を振りながら、俺を呼ぶ。溜息を漏らしつつも、口元はつい緩んでいる。なまえの所まで歩いて行くと、今度はこっち、と袖を引かれる。
 小さな空き地、花咲く野原、大きな犬のいる家、背が高くて綺麗な時計台。今日歩いたルートも、散歩の時にいつもなまえが行きたがる場所ばかり。そして最後は決まって、ここに寄るんだ。

「パパー! 押してー!」
「またブランコかぁ? しっかり掴まってろ。いくぞぉ」

 なまえはこのブランコってのが、特に大好きで。ここへ来ると、必ずこうして背中を押してやる事になる。

「もっと、もっと高く!」
「……落ちんなよぉ」

 しばらく漕ぐと、高さに満足したのか嬉しそうに笑う。その後も、まだ掴まるだけで精一杯な鉄棒をやろうとしたり、砂場で作った砂の団子を勧めてきたりと、あちこち動き回った。少し経つと、疲れてきたのか俺の服の袖を引く。

「パパ、帰ろ……」
「もういいのかぁ?」
「うん! ボスのとこ、帰ろ!」

 ボスなんて言葉、意味分かって覚えてんのかぁ? そう思うが、きっと分かっちゃいないんだろう。ベルやら他の奴らが言っていたのを聞いて、覚えたに違いない。とか何とか考えていたら、後ろからなまえがついてきていない事に気付いた。

「う゛おぉぉい、置いてくぞぉ!」

 大声で呼ぶと、こちらへ歩いてきたなまえはその小さな手で俺の手を握った。

「どうした、なまえ」
「手……」
「手が何だぁ?」
「つなぐ」

 力加減に気をつけながらゆっくりと握り返してやると、嬉しそうに笑って歩き始める。……まぁ、ちょっと歩いたらすぐに疲れたらしく、眠っちまったなまえをおぶってやる羽目になったんだけどなぁ。



「おかえり……あれ、なまえもう寝てるんだ」
「ししっ、かーわいい」
「う゛おぉい! なまえに触んなぁ!」
「………はいはい」


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