僕には大切な一人娘、なまえが居る。この子は僕が命を懸けて守ると決めた女の子だ。妙ちゃん以外にこんなに大切に思える存在が出来るだなんて、予想もしていなかった。

「なまえ、僕は買い物に…」
「若ー! なまえ様の前で"僕"はいけませんよ! お母さんなんですから!」
「うっ……わ、私は、買い物に行ってくるからお留守番を…」
「ご立派ですよ、若!」
「東城、少し黙ってくれ」
「はい」

 東城を黙らせて、なまえに向き直る。

「いいか? なまえはお留守番を…」
「……母さん、行っちゃうの?」

 う…そんな目で僕を見ないでくれ…。でもなまえを連れて行くと、お菓子を買わなくちゃいけなくなる。そうは思うものの、段々と潤んできた大きな瞳に負けた。

「…なまえも行くか?」
「うん!」

 着物をよそ行きの可愛い着物に着替えさせてやり、手を繋いで家を出る。妙ちゃんが一緒に選んでくれた桜模様の淡いピンク色の着物は、なまえにとてもよく似合っていた。


 僕…いや、"私"の娘


「母さん! あめと、チョコと…」
「なまえ。おやつは1つだけだ」
「えー…じゃあ、んーと…チョコ!」
「…いい子だ。チョコだな」

「素敵なお母さんですぞ、若ー!」
「……東城の奴…」


[ back ]