僕には娘が居ます。とても良い子で、僕の事もよく気遣ってくれるし、手伝いもしてくれる。我ながら良い子に育てられたものだ。

「お父さん、今日はお仕事は?」
「今日はないよ。でも銀さんが熱出しちゃったから……ちょっと様子を見てくる」
「じゃあ私も行く!」

 お粥くらいは作れるからと微笑むので、じゃあ頼もうかな、と頭を撫でてやる。準備をしに部屋へ戻ったなまえを待ち、一緒に家を出た。



「銀さーん? 僕です。開けてください」
「新八アルか。何しに来たネ」
「いや、お見舞いだから。なまえも居るよ」
「こんにちは!」

 なまえは僕の後ろからひょこっと顔を出し、元気に挨拶をする。神楽ちゃんはなまえをすごく可愛がっているから、なまえの顔を見るとたちまち笑顔になった。

「神楽さん、銀さんの様子は?」
「寝てたけど、さっき腹減ったとか言って起きたアル」
「じゃあ早速お粥を作りますね!」
「私も欲しいアル!」
「ふふ、わかりました」

 神楽ちゃん、相変わらず図々しくお粥を所望してる…。いつもの光景に溜息をつき、家主がまったく手をつけていない部屋の掃除に取りかかった。

 しばらくすると、台所の方からお粥の優しい匂いがしてきた。その匂いに反応して、銀さんも奥の部屋からのそのそと出てくる。

「銀さん! お久し振りです」
「おー、なまえ。来てたのか」
「お粥出来ましたよ。どうぞ」
「サンキュ。俺の風邪にはなまえの粥が一番効くからな」

 銀さんはお粥を口に運び、うめェぞ、となまえに優しく言った。よかった!と微笑むなまえを見て少々頬を赤らめている銀さんを冷めた目で見ているうちに、神楽ちゃんもお粥を完食していた。



「それにしてもなまえは料理うめェな、新八」
「ああ…最初は姉上が料理教えようとしてたんで、必死に止めて僕が教えましたから」
「正しい判断だったな」
「なまえ、ケーキも食べたいアル」
「じゃあ作りますね」
「いい嫁になるぜ、ありゃ」
「銀さんには嫁がせませんから安心してくださいね」
「………メガネのくせに」
「メガネって何だァ! いやメガネですけど…だいたい、歳を考えてください!」


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