俺がほんの数分目を離した隙に、ボスが居なくなっちまった。困った事に、ボスだけじゃなく娘のなまえもだ。おそらく2人は一緒に居るんだろう。なまえはボスに懐いているからな。

「しかし、一体どこに……あ」

 目の前には、なまえとボスが鬼ごっこ(らしき遊び)をしている姿。さっきから遠くでバタバタとうるさいと思えば、なまえ達だったのか。

「待てって、なまえ…! 痛っ」

 生憎、俺以外のやつらは任務に出ている。俺に気付いていないボスは、いつものようにすっ転んでいた。……ああいう所は、やはりボスとして克服してほしいモンだな。まあ、あれがボスらしさでもあるんだが。

「ボス、なまえを…」
「ロマーリオ、居たのか! ……ほーら! やっと捕まえたぜ、なまえ」
「ぎゃっ」

 ボスは俺の存在に気付いた瞬間、別人のような動きで素早くなまえを抱き上げた。そして、今日も散々逃げ回ってくれたな、と笑って俺になまえを渡した。

「日に日に逃げ足が速くなるな」

 苦笑して軽く手を振りながら、ボスは奥の部屋へと戻っていった。その背を見送り、腕の中のなまえの頭を撫でる。

「なまえ、またボスと鬼ごっこか?」
「追いかけっこだよ!」
「そうだったな」
「どこかへ行くの?」
「いや、ボスもあの調子だからな。特に仕事もないんだろう。今は他の部下達が任務に出ているからな」
「じゃあ、今日は遊んでくれる?」
「ああ。……だから、ボスは今日1日くらい休ませてやれよ」

 すっかり機嫌を良くして素直に頷いたなまえを抱き直し、俺も部屋へと戻っていった。



「あ、ボス寝てるー」
「転んでそのまま寝たんだな」
「ボス、風邪ひくよー。ボス!」
「こらこら、ボスをつつくな。……仕方ない、部屋へ運ぶか」


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