「これは……何ですか……」
ある日私が学校から帰ってみると、部屋の中は電撃文庫の海でした。
足の踏み場がないほどの、本、本、本。その渦の中心で、せっせと本棚の掃除をしているのが、私のお姉ちゃん。
「えー? ライトノベルだよー!」
「それは分かるけど……一体何をしているの、お姉ちゃん」
「また本増えたし、そろそろ本棚の拭き掃除しなくちゃなーって思って」
拭き掃除なんかしたって、本棚に入り切らないほどの本の量のくせに。……なんて、私も人の事を言えないけれど。漫画を買いすぎて、本棚を何度新調してもすぐ入り切らなくなってしまう。よって、机の上やカラーボックスにも漫画が山積みになっているのだ。
「なまえもそろそろ、漫画整理したらー?」
「うーん」
「漫画の神様に怒られるよぉお」
「……そうだね」
「あー、なまえ信じてない! 本当に神様っているからね! そこ、なまえの肩に!」
こーんな形の神様が! とジェスチャーで表して見せるお姉ちゃん。ふと見ると、お姉ちゃんの手には私が買おうとしていたライトノベルが。
「お、お姉ちゃん…!」
「何ー?」
「そ、それ買ったの!?」
「今日発売だったし、チェックしてた本だからねー。読みたい? これはこのキャラがね……あ、この先はネタバレになっちゃうか」
延々と語り出しそうなお姉ちゃんだったが、自分でストップをかけて本を差し出した。物凄い笑顔だ。お姉ちゃんが笑顔で本や漫画を貸してくれるときは、私がこの本にハマる事が分かっているときだ。
「私…これハマるかな?」
「ハマるね。ゆまっちも言ってたもん、狩沢姉妹好みの本っすねーって!」
「さ、さすが遊馬崎さん……」
オタク姉妹。
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