今日も部活で帰りが遅くなり、帰ったらすぐに夕飯、風呂に入って寝る…そんな予定を頭の中で立てていたのに。部屋のドアを開けてみれば、ベッドに先客。
「………姉さん?」
ベッドに手をついて覗き込むようにして見ると、ぐったりとした表情が見えた。疲れているなら自分の部屋で寝ればいいのにと息を吐き、細い肩を揺らす。
「姉さん、自分の部屋に……姉さん?」
「……リョーマ…?」
「…何、熱あるわけ?」
「わかんない……頭、痛い…」
…俺の部屋と自分の部屋、分からなくなるほど痛むのか。
「ほら、早く」
背中を向けておぶさるように促すと、姉さんがもたれ掛かるのが分かった。思っていたよりは軽く、少し驚く。
「…姉さん、重い」
少しからかってみるが、何も反応が無いあたり本当に限界らしい。姉さんを部屋へ運んでベッドに降ろし、布団をかけてやる。
「……明日も学校あるんでしょ。休んだら? 1日くらい…」
「…ん。そう…する…」
乾いた咳をする姉さんの枕元に、冷蔵庫から出してきたミネラルウォーターのペットボトルをそっと置いた。
「水、置いとくから」
「……ん」
「姉さんが体調悪いと俺まで調子狂うからさ…早く治してよね」
練習試合も近いし…と付け足せば、姉さんはつらそうに、だけど笑って頷いた。
「無理は、しなくていいから」
「…難しいこと言うのね」
すっと目を閉じる姉さんを見て、少しだけ口元を緩めたのは、内緒だけど。
練習試合なんて只の口実。早く治して、笑っててほしいだけ。
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