俺はとある理由で、荒川河川敷に住んでいる。その生活は、命の恩人の“私に恋をさせてくれ”という願いから始まった――の、だが。

「なんでなまえまで!」
「え……だって、お兄ちゃん今日からここに住むんでしょ?」
「なまえは義務教育ラストスパートだろ!」
「河川敷でだって、受験勉強は出来るもん」

 なんでこんな事に……こんなはずではなかった。まず俺は、ここに一応恋をしに来ている。何故妹が付いてくるのか! しかも受験生の、難しい年頃のが!

「へぇ、なまえっていうのか」
「はい! 兄がお世話になっています!」
「礼儀正しいなー、よし気に入った! 今日からなまえも仲間だ! 河川敷での仕事は、秘書またはアイドル担当でどうだ? あ、今日中に新しい名前を……」
「こら河童! 勝手になまえを引き込むな!」

 ちょっと目を離すとすぐこれだ。まったくこの河童、油断も隙もない。だけど問題はなまえの方だ。喜んでいる。なまえまで河川敷で暮らすだと? こんな危ない場所で、1人で!? 俺の家は2人じゃ狭いだろうし……。

「最近物騒だし、女の子の一人暮らしは危ないからなー。しばらくシスターの所にでも世話になったらどうだ?」
「なまえは俺と住みます兄妹ですから!!」

 ああ、言ってしまった。でもまあいい、なまえをシスター(という名のブラザー)の元で暮らさせるよりは、全っっっ然マシだ!

「なまえ」
「何?」
「なまえ…床で……寝ないよな…」
「お兄ちゃんソファで寝るつもり? 妹とはいえ女の子を、床に寝かせるの?」
「……」
「隙あり! ソファ取ったー!」

 ソファ……もうひとつ…買わないと……。


[ back ]