翔陽高校バスケットボール部、部室。そこで俺は困っていた。

「ん?」

 ここに確かに置いていたはずのメガネが、ない。顔を洗いに行ったとき、外して置いたと思うんだが。

「どうした、花形」
「ああ、藤真。俺のメガネが…」
「メガネ? メガネなら…」

 藤真の後ろから出てきた小さな女は、紛れもなく俺の妹のなまえだ。その顔には、ふちの黒いメガネがかけられていた。

「……なまえ」
「お兄ちゃんのメガネ、かけてみたくて」
「気は済んだか? まったく……なくしたかと焦ったぞ、一瞬」
「はは、そう怒るなよ花形」
「藤真先輩の言う通り!」

 俺にメガネを返すなまえと、その頭を撫でてやる藤真。……仕方なく、監督でもある藤真に免じて許してやる事にする。

「……いたずらも程々にしろよ、なまえ」
「はーい」
「さ、なまえ。まだ午後の練習があるし、サポートを頼むぞ。マネージャー」
「はい、藤真先輩!」

 見ていて思ったんだが、(ちょっと複雑な心境だが)きっとなまえは藤真を好きなんだろう。藤真もその気がまったくないわけでもなさそうだし……。

 待てよ――。

「ナイスパス、藤真先輩!」
「おう」

 なまえにいちいち相槌を打つし、なまえもいちいち藤真に声をかける……いや、むしろ藤真にしか声をかけていない気もする。やっぱり、まさか……。

「藤真先輩ナイス!」
「ちゃんとスコア書いておけよ、なまえ」

 なまえは……もしかしなくても藤真と――


 新事実発覚
 妹の彼氏は、我が部の選手兼監督


「花形、どうした! ボーっとするな!」
「お、おい! ボール行ったぞ花形!」
「お兄ちゃん? シュート、シュート!」
「……………」
「花形が固まってる…」


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