部活後の自主練習を済ませて学校を出たら、すでに外は真っ暗だった。自転車をひたすら飛ばし、早く飯食って寝る事だけを考える。家に入った瞬間、すぐに走ってきて出迎えてくれたのは、俺の双子のなまえだった。

「楓、おかえり!」
「……ただいま」
「また眠そうだね、ご飯は?」
「食べる」
「そ。準備するから座って待ってて」
「……ん」

 背中を押され、眠気で覚束なくなりつつある足を少しずつ進めて椅子に座る。温めた料理を俺の前へと並べていくなまえは、まだ瞼が重い俺の頬を思いきり抓った。

「いてっ」
「もう、起きてよ! せっかく温めたんだから、ちゃんと残さないで食べてね」
「ん……」
「……眠そうね、本当に」
「目が開かない」
「でしょうね。お風呂は?」
「……朝でいい」

 それだけ答えて料理に手を付けると、なまえが俺の隣に座り、肩へもたれてきた。箸は休める事なく、目だけをなまえの方へと向ける。

「……何だよ」
「いつの間にか身長も抜かされてさ」
「……」
「いつの間にか、こんなに肩とかガッチリしちゃってさー。バスケも私なんかより、ずっと上手くなっちゃって」
「だから………何だよ」
「ずるいなぁ、楓は」

 何を言うかと思えば、ずるいって……なまえはたまに、よく分からない事を言う。なまえはなまえで、頭も良いしバスケ部に入っているくせに。何を言ってるんだか。

「……なまえ」
「んー?」
「明日帰ったら、近くのコート」
「え?」
「日曜だろ、明日」
「うん」
「……付き合えよ、練習」

 するとなまえは途端に笑顔になって頷き、足取り軽く部屋へと戻っていった。

―――――

「なまえ、なんで張り切ってんだよ…」
「え、楓とバスケなんて久々だし!」
「………俺が勝つけど」
「何言ってるの、勝つのは私よ!」
「む…」


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