「お兄ちゃん、これから部活?」
「ああ、試合も近いからね。いってきます」
妹に軽く手をあげて応え、家を出ようとすると、くいっと服の裾を引っ張られる。ドアノブに手をかけたまま振り向くと、やはりなまえが裾を掴んでいた。
「どうした? なまえ」
「私も行っていい? 見学しに…」
「……いいけど」
なまえは安心したように笑い、着替えてくるからと部屋へ上がっていく。数分待つとなまえが戻ってきて、一緒に家を出た。
「何かあるの? 急に見学なんて」
「え、えっと…何も?」
「はは…怪しいな、その反応」
話しているうちに学校に着き、なまえの手を引いて体育館へ入る。練習はすでに始まっていて少し遅刻したようだったが、なまえも一緒だったせいか特に怒られはしなかった。そこへ寄ってきたのは、1人の後輩。
「神さん! 遅刻なんて珍し……んあ? なまえ」
「信長くん!」
「見学かよ? 珍しいな!」
兄である俺をそっちのけで進められる話を聞き、あいつら仲が良かったのか、と少しだけ驚いて目を見開く。すると、牧さんが俺に耳打ちをしていった。
「最初は信長が頑張ってたんだがな。だんだんなまえが、信長に懐いてな」
「……えっ、それって…」
再び2人を見ると、なまえが信長に差し入れのクッキーを渡していた。………昨日散々味見させられたのは、このためだったのか。
「……おいしいだろ? なまえのクッキー」
「げっ、神さん…ゲホッ、ゴホッ……う、うまいっす!」
「信長くん大丈夫? お兄ちゃんどうしたの?」
「なんでもないよ」
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