俺は今、戦っている。……そう、“食卓”というフィールドで。
「………佑助ー?」
「な、なんだよ。なまえ姉ちゃん」
「そのコロッケ、もらったー!」
「やめろー! それは俺のだ!」
必死に箸を伸ばすと、スッと引いていくなまえ姉ちゃんの箸。姉ちゃんを見ると、何事もなかったかのようにご飯を食べている。あれ、今俺の分取ろうとしてなかったっけ。幻か? おかしいな。ひとまず安心してご飯を一口食べると、……コロッケが丸ごと皿から消えていた。
「なまえ姉ちゃん! 食ったろ! 絶対姉ちゃんが食ったんだ!」
「何言ってるの、佑助。コロッケならあるじゃない、そこに」
「ああ! 一口かじられてたった今戻ってきた可哀相なコロッケがな!」
一口食べてから戻されたコロッケ。一口でけぇな、本当に一口かよコレ。紛れもなく俺のコロッケだけど、正直こんな食べかけ状態のを食べたくねぇ。仕方なく、コロッケをなまえ姉ちゃんに差し出した。
「何?」
「……食えよ……食えばァ!?」
「あらそう。ありがと」
にっこり笑って奪われたコロッケは、姉ちゃんの腹ん中へおさまった。
「……俺、おかずねぇし…」
「あるじゃないの、佑助」
「え?」
「ほら」
姉ちゃんが指した先には、コロッケの横に添えられていたキャベツの千切りが。
「これはおかずじゃねぇ!」
「ごちそうさまー」
「オイ! なまえ姉ちゃん!」
俺の叫びも虚しく、姉ちゃんはスキップしながら部屋へ戻っていった。
おかず争奪戦
「……ああ…俺のかぼちゃコロッケ…」
「おいしかったわー。ありがと佑助」
「ふざけんなー! 優しい姉ならか弱い弟に譲るだろ、普通は!」
「あら、うちは弱肉強食よ。佑助」
「………(卑屈モードON)」
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