私の妹は、私とともに、我らが王子であるソーマ様に仕えている。王子が私を拾ってくださったときに、まだ幼かったなまえの事も一緒に引き取ってくださったのだ。

「ソーマ様、ソーマ様!」
「ん? どうした、なまえ」
「お食事の準備が出来ております!」
「なまえ、もう少し静かに…」
「気にするなアグニ。なまえは元気だな」

 起きたばかりの王子へ挨拶もせずに突っ込んでいくなまえを叱るが、王子は気にせずなまえを受け止める。そんな日常の光景が、とても微笑ましい。

「なまえ、王子のお食事中に少し頼みたい事があります」
「なぁに? 兄さん」
「間食のためのケーキを作るのですが…少々材料が足りないんです。メモを渡すので、買ってきてくれますか?」
「はい!」

 メモを渡すと笑顔で出かけていき、王子の食事中に素早く戻ってくる。お礼を言って頭を撫でると、嬉しそうに笑ってまた王子の傍へ駆けていった。

「なまえ、王子はまだお食事中ですよ」
「なまえも腹が減っているんじゃないのか? アグニ、なまえにも何か用意を…いっそ皆で食事にしないか?」
「ですが私どもは執事の身。王子と一緒に食事をとるなど……」
「その王子の俺が言うんだ! いいだろ? さあ、用意をしろ。アグニ!」
「……御意のままに」

 自分達の食事を用意し、なまえとともに王子と同じテーブルについて食事をとる。私にとっては手足が震えてしまうほどの事だというのに、なまえは次々と美味しそうに料理を平らげた。

「なまえ、王子の前でそんな…」
「美味いか?」
「はい! 兄さんのご飯は、世界で一番美味しいです!」
「そうか! 俺もだ!」
「王子……なまえ…」

 よく考えてみれば、こんなに楽しい食事が出来るようになったのは、なまえのおかげなのかもしれない。その無垢な笑顔のおかげで、王子も私もこんなに温かい気持ちでいられるのだろう。

「なまえ、皿洗いは手伝って下さいね」
「うん、兄さん!」


 日常の中の、幸せ


「そういえば近々、シエル様とセバスチャン殿が見えますよ」
「何、本当か! アグニ」
「はい。お手紙が届いておりました」
「読ませろ、アグニ!」

 ――近くへ行く用のついでに、なまえに会いに行く。セバスチャンも連れてな。

「……俺の事が…書いていない……」
「なんでもシエル様は、なまえとのチェスが相当に楽しかったようで…」
「……なまえ! 皿洗いはいい! 今から俺にチェスを教えろ!」
「はい、ソーマ様!」
「王子……」


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