「なまえ、こちらへ来い」
「はい、おじいちゃん…」

 ああ、またこの日が来てしまった。おじいちゃんに通信簿を見せる日。私はあまり成績が良くなくて…通信簿を見せるのが毎回怖い。成績が下がっていた日にはもう、両親共々怒られてしまうのだ。恐る恐る恒例の通信簿披露をする。

「…こ、これです。今回の通信簿」
「ああ。見せてみろ」
「はい」

 今回は前回より成績も上がって、テストの順位も少し上がったんだけれど……前回が酷かったからなぁ…。やっといつもの成績に戻った程度だし、やっぱり怒られてしまうだろうか。

「お、じいちゃん…?」
「…なまえ」

 通信簿を閉じて机に置くと、熱いお茶を一口含み、こちらを見る。緊張で渇いた喉に、私もお茶を通した。

「前回の成績より上がったんだな」
「あ…うん。なんとか、ね。最初の頃の成績には戻ったかな」
「ああ、そうだな……よく頑張った」

 予想外の言葉に顔を上げると、おじいちゃんが私へ微笑みかけた。おじいちゃんがこんな風に優しく笑ってくれるなんて珍しくて、驚いてしまう。

「次の試験も頑張るように」
「…うん! ありがとう」

 おじいちゃんの笑顔なんて、本当に久しぶりだった。
 もっともっと頑張って、また笑顔で褒めてもらおう。


[ back ]