なまえ姉さんと僕は、使用人としてとある大きなお屋敷で働いています。……といっても、僕はいつも失敗ばかりしてしまうけれど。坊ちゃんに拾っていただいてからは、なまえ姉さんと一緒に庭師の仕事や、掃除なんかをしています。

「なまえ姉さん!」
「あ、フィニ。庭はもういいの?」
「枯れた葉だけを取ろうとしたら、枝ごと折っちゃって……またセバスチャンさんに怒られちゃった」
「……やっぱり、加減するのは難しい?」
「うーん………うん」

 えへへと顔では笑ってみるものの、心の中はやっぱりショックでいっぱいだった。そう、とだけ小さく呟くと、なまえ姉さんは目線を落とす。

「姉さん、僕…たまに思うんだ」
「何を?」
「向いてないのかな、なんて」

 庭師の仕事は、草木や花に直接触れるものだし……力の加減が出来ない僕には、もしかしたら向いていないんじゃないか。そう思ったんだ、と話す。

「フィニ」
「え?」
「私は、あなたが一番向いていると思うけど? 庭師さんには」
「でも僕……」
「だって、フィニ。あなたは力仕事が得意じゃない。庭師って、それなりに力が要るお仕事よ? それに、フィニは優しいしね。体力や性格は向いていると思うわ」

 あとは、力のコントロールだけが課題なんじゃないかしら――なまえ姉さんが微笑んだ。僕は姉さんが言うように、本当にこの仕事に向いているのかな。

「フィニ、庭の植木の事で頼みたい仕事がありますので……ちょっと来てください」
「えっ、僕ですか?」
「……あなたにしか頼めないんですよ。力仕事ですから」

 セバスチャンさんが僕を呼びに来て、早く来てくださいね、と言い残して部屋を出ていった。

「僕にしか、かあ」
「ほら! 急ぎの用事みたいだったし、早く行きなさい」

 背中を押されて部屋を出る。ちらりと振り向くと、姉さんが笑って見送ってくれた。

「自信持って、フィニ!」


 僕の“仕事”


「助かりましたよ。木を丸ごと1本動かせるのなんて、あなたくらいですし」
「この木を全部、こっち側の通りに植え直せばいいんですね! 幹を折らないようにしなくちゃ」


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