朝目覚めたばかりの僕は、セバスチャンが用意したモーニングティーを、いつものように優雅に飲んでいる……はずだった。今日僕の隣で紅茶を淹れているのは、まだ幼い妹のなまえだ。いつも僕よりも起きるのが遅いというのに、今日は雨でも降るのか?

「おはよう、シエル兄さん」
「……どうしたんだ? なまえ」
「うん。ちょっとだけ早起き!」

 なんでも、朝早くに僕が出かけるとセバスチャンから聞き、見送りのためにわざわざ早起きして紅茶を淹れたという。……幼いながらに、なかなか可愛い事をしてくれる。美味しいかは分からないけれど、と不安げに差し出された紅茶を受け取り、最初の一口をゆっくりと口に含む。

「……美味いぞ」
「ほ、ほんとに?」
「ああ。セバスチャンが淹れるよりも美味いかもしれないな」

 冗談混じりに言うと静かに扉が開いて、様子を見に来たセバスチャンが現れた。挑発するように奴に向けて笑ってやると、奴も苦笑しながら話し始める。

「おやおや。では、なまえ様に紅茶の淹れ方を教えていただかなければなりませんね」
「ああ、そうしろ」

 喜ぶなまえに笑いかけ、着替えをするからと一度部屋から出す。嬉しそうにスキップして廊下を通る足音を聞き、自分でも分かるほどに頬が緩んだ。

「なまえ様を見習って、お紅茶くらいご自分で淹れてみては如何です?」
「……面白がっているだろう、お前」


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