「お父さん、お父さん」

 後ろから僕のマントをくいくいと引っ張ってくるのは、娘のなまえだ。僕に似たのであろう綺麗な黒髪に、白く透き通る肌。愛らしい笑顔。自慢の娘だ。

「何だい? なまえ」
「オパチョと、遊んできてもいい?」
「ああ、いいよ。あんまり遠くへ行っちゃだめだよ」
「うん!」
「いい子だ。オパチョ、なまえを頼むよ」

 元気に頷いた2人の頭を撫でてやり、S・O・Fから降ろしてやる。オパチョと手を繋いで走るなまえの姿はとても微笑ましくて、たまには僕も歩こうかと地に足を付けた。

「なまえ、こっちこっち!」
「まって、オパチョ!」

 追いかけっこをする2人を、近くの岩に座って眺める。オパチョは小さくて身軽だから、なまえが必死に追いかけてもなかなか捕まらなかった。

「あんまり走ると転ぶよ、なまえ」
「はーいっ」
「……分かっているのかな、まったく」

 苦笑しながら眺めていると、案の定なまえが小石に躓いて転ぶ姿が目に入った。それに気付いたオパチョが猛スピードでなまえに駆け寄り、抱き起こそうとするが、体格的に無理だったらしい。涙目でこちらを見ている。

「やれやれ…仕方ないな」
「ハオさま、ごめんなさい」
「いいよ、オパチョ。なまえと遊んでくれてありがとう」

 オパチョの頭を撫でてからなまえを抱き上げると、小さく震えて涙を堪えていた。

「なまえ、痛むかい?」
「い、たくない」
「我慢しなくてもいいんだよ」
「……う、っく」

 とうとう泣き出したなまえの額に口付けて、オパチョを連れてS・O・Fへと戻った。


 小さなお姫様


「ハオさま。なまえ、だいじょぶ…?」
「ああ、大丈夫だよ」
「オパチョ、もっかい遊ぼ!」
「こらこら。今日はもうだめだよ」
「むぅ……」
「そんな顔をしてもだめだよ」
「……はーい…」


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