私のお母さんは、少し躾が厳しいんです。

「なまえ、皿洗いお願いね」
「はい。お母さん」

 皿を洗いに部屋を出て、息を吐く。お母さんは部屋でお煎餅を食べながら、テレビを見ている。私は手早く皿を洗い終えると、また部屋へ戻った。

「お母さん、お皿洗ったよ」
「そ、ありがと。じゃあ…お茶を頼んでもいいかしら」
「うん! お皿洗いながらお湯も沸かしたから、すぐ用意するね」
「あら、ありがとう」

 食後はよくお茶を頼まれるから、お湯も沸かしておいてよかった…! でも、こんな風に気が回るようになったのも、お母さんのおかげ…なのかな。

「はい、お母さん。お茶です」
「ありがと」

 お煎餅をかじり、目線はテレビに向けたままのお母さんが、お茶を受け取って一口啜る。すると軽く目を見開いて、湯呑みをタン!と音を立てて置き、こちらを見た。

「え…と……お、お茶…おいしく、なかっ…た、かな?」

 恐る恐るお母さんの顔を覗き込むと、お母さんは僅かに微笑んだ。

「お母さん?」
「お茶……おかわりくれる?」
「それって…」
「……おいしかったわ、なまえ」

 いつも厳しいお母さんが私を褒めてくれたのは、いつ以来か思い出せないほど久し振りで、とても嬉しくなった。

「ありがとう、お母さん!」
「いいから早く、おかわりちょうだい」
「うん。すぐいれる!」


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