「那由太くん、おはよう!」

 大きな声で挨拶してくれたのは、同じ九華科の可威のHONEY、柚留。でも、ごめんね柚留……間違ってるよ…。

「私、なまえ」
「あっ……え!? ご、ごめんなまえちゃん!」
「いいの、いいの。あの可威だって、たまに間違えるんだから」

 慌てて頭を下げて謝ってくれる柚留に苦笑して話していると、後ろからまた大声と、騒々しい足音が聞こえてきた。そう、こっちが本物だ。

「あー! 居た! なまえ、ゆずゆず! 探したんだぞー!」

 少し怒ったような顔で寄ってくる那由太を見ると、思わず笑ってしまう。本当に学校中を探したんだぞ、って感じの顔をしている。
 那由太は息を切らしながら、可威と絃青に「なまえとゆずゆず見つけた!」と携帯で連絡を入れていた。

「もう1時間目始まるぞ! 可威と絃青と、手分けして探してたんだからなー!」
「ごめん。外の空気吸いたくて」
「なまえのせいで疲れたんだから、ジュースとか奢れよな!」
「……それは絃青に頼みなよ」

 那由太は私の、私は柚留の手を引いて、3人で教室までの道を走る。
 途中で先生と擦れ違った時には、「あなたたち双子はすぐ廊下を走るんだから。もう廊下は走っちゃダメよ?」と優しく注意されてしまった。……HONEYの立場である柚留だけは、酷く怒鳴られてしまったのだけれど。

「遅ぇぞ柚留……俺に何か言う事は?」
「ごめんなさい、MASTER可威様ー!」
「遅刻ですよ、なまえ様。那由太様と可威さん…そして私へ、何か言う事は?」
「那由太、可威、ごめん……絃青も、探させてごめんなさい」


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