「なまえ、なまえー!」
「あ、ケロロ先輩っ」

 基地の中を一人で散歩していると、後ろからお兄ちゃんの隊長さんのケロロ先輩が走ってきた。ずいぶんと急いでいるようで、汗びっしょりだ。

「どうしたんですか?」
「クルルが居なくてさ! まったく、どこ行っちゃったんだよ!」

 ぷんぷん! と効果音が聞こえてくるような話し方と必死の形相から、相当焦っているのが分かる。

「お兄ちゃんてば、また皆さんに何かしたんですか!?」
「そりゃもう「俺は何にもしてねぇぜー? クーックックック…」ってクルル!」

 ケロロ先輩の言葉を遮って会話に入ってきたのは、お兄ちゃんのクルル。本当に、今度は何をしたのかしら。

「お兄ちゃん、皆さんに何したのよ!」
「だから何もしてねぇって。隊長の勘違いじゃねぇのー? クーックック」
「これ放置したのクルルでしょ! 大変な事になってるんだよ、夏美殿がカンカンなんであります!」

 ケロロ先輩は必死にお兄ちゃんに抗議するけれど、お兄ちゃんはほとんど無視の状態で笑っているだけ。でも、放置されていたという物体には【966】と確かに刻まれていた。

「やっぱりお兄ちゃんだったじゃない。ちゃんとあとで皆さんに謝ってね?」
「……クーックックックッ…なまえがカレー作ってくれるんならなァー…」
「え、カレー? 夏美ちゃんのじゃなくて?」
「俺様の舌にはお前のカレーが一番合うんだよ……ククッ、作んのか? 作らねぇのかー?」
「つ、作るから! 皆さんに謝ってよ?」
「契約成立だな、いいぜェ……謝っといてやるよ、クーックックック…」

 あとからお兄ちゃんの所にカレーを持っていく途中、ケロロ先輩やギロロ先輩に涙でグチャグチャになりながらお礼を言われた。


 たまには素直


「お兄ちゃん、謝ってくれたんだ」
「ククッ、俺がお前との約束破った事なんてあったかー?」
「いっぱいあった気がするけど」
「クーックックック」
「……(笑ってごまかした…)」


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