「あれ、なまえ?」
「……ん?」

 なんだか今日は、なまえがぼんやりしている。いや、いつもぼーっとしてるんだけど……今日は特にだな。俺が仕事をしている横で、なまえはぼんやりとこっちを見ている。

「結也……ぼーっとする…」
「ああ、ぼーっとしてる」
「気持ち悪い」
「……ちょっといい?」

 なまえの額に自分の額を付けてみる。……熱い、気がする。まさか熱があるのか、こんな忙しい時期に。俺だって今は仕事が山積みで精一杯なのに……看病なんか出来ないぜ?

「大丈夫かよ、なまえ」
「んー……」
「顔赤いし、額は熱いし……風邪じゃね? 奥で寝てれば?」
「でも、仕事が」
「残りは俺がやっとくから。な?」

 そう声をかけると、なまえは近くにあったソファへふらふらと歩いていき、半ば倒れ込むようにして突っ伏した。仕事の疲れも溜まっていたんだろう、すぐに寝息を立て始める。

「結……也、」
「……奥で寝てていいのに」

 小さなクッションを頭の下に入れてやり、枕がわりにしてやる。体全体を覆うように毛布を掛け、暖房の設定温度も少し上げてやった。

「……早く治せよなー、なまえ…」

 うっすらと汗をかいた額に濡らしたタオルをのせてやり、頭を一撫でして仕事に戻った。



「さっき濡らし直したタオルが、もう熱い…」
「……はあ…っ…」
「インフルエンザだったらヤバいな……よし、こういう時こそ笹塚さん呼ぼう」
「おい、積極的に俺を巻き込むな」
「あ。居たんだ」


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