今日は奈々を留守番させて、妹のなまえと一緒に買い物に行く予定だ。奈々も行きたがってたが、でかい腹してあんまり動かれたんじゃ子どもも疲れるだろうから、留守番。……まぁ、なまえの方は俺とのデートだって楽しみにしてるみたいだけどな。

「お兄ちゃんと出かけるなんて何年振りだろ……」
「……そうだな、結構久々だな」
「ふふ…トラネスのタクミとデート」
「……あのなぁ」

 にやけるなまえの頭を小突き、家を出てゆっくりと歩き出す。一歩後ろからカツカツとなまえのブーツの音がする。

「で? なまえ、何買うんだよ」
「ん?」
「言っとくけど…今日は何も買ってやらねーぞ、俺は」
「え」

 そんな!と俺の服を掴むなまえ。やっぱりこいつ、何かしら買ってもらう気でいたか。仕方ないかと思いながら、深い溜息を吐いた。

「……何が望みだ」
「んー…可愛いブーツ!」
「……分かったよ」
「やった!」

 欲しいのあったんだ、と嬉しそうに笑うので思わずつられて頬が緩む。なまえの好きそうな店を見つけ、あそこは? と声をかけると一瞬だけ驚いたような顔をして、すぐに微笑んだ。

「なんだよ」
「お兄ちゃん、私の好きなデザイン覚えててくれたんだ」
「……まぁな、お前の好きそうな物くらい覚えてるよ。一応兄貴、だからな」
「ありがとう」

 そしてなまえにブーツを買ってやった後、さらにケーキまでねだられる事になるのだった。



「お兄ちゃん、今日はありがとう」
「……どういたしまして」
「あ、ケーキもうひとつ買って!」
「は? まだ食うのか?」
「奈々お姉ちゃんの分! ……と、私のも!」
「……はいはい。おやつのケーキふたつな」


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