ボクの家の朝は早く、妖怪たちとドタバタしながら始まる。そんな騒がしい家の中で、歳の離れた姉であるなまえ姉さんは静かに学校へ行く準備をしている。

「若ー! 遅刻しますぞー!」
「ま、待ってよ! あれ、朝ご飯は?」
「若! 準備は出来ております! 朝ご飯はこちらです!」
「なまえ姉さんは?」
「もう朝ご飯を食べ始めていますよ」

 妖怪たちに準備を手伝ってもらい、案内されながら走って部屋へ行き、雪女からご飯を受け取り食べ始める。向かい側には、落ち着いて食事をするなまえ姉さんがいた。

「なまえ姉さん、あの…」
「遅いわよ、リクオ。今日もまた寝坊なの?」
「ご、ごめんなさい……昨日よく寝付けなくて、起きられなかったんだよ」
「もういいわ、原因は分かってるから」
「え?」

 なまえ姉さんが視線を向けた先には、2人の妖怪。ギクッと体を強張らせ、震えながらこちらを振り向いた。何の事だかさっぱり分からないボクは、ただ大きく欠伸を漏らした。

「あなたたちね? 青田坊、黒田坊」
「え……なまえ姉さん、どういう事?」
「あなたたち、夜中に大声で笑いながら呑んでいたでしょう? お酒」
「な! なまえ様起きてらしたんで!?」
「ええ。あなたたちの声に起こされたのよ」

 なまえ姉さんがキッと睨みつけると、青田坊たちは真っ青になって冷や汗をだらだらと流し始めた。やっぱりなまえ姉さんが怒ると迫力があるなぁ……ボクよりもずっと、三代目に向いてるんじゃないかな。

「今日帰ったら、お祖父様に報告して怒ってもらうから」
「そ、そんな…なまえ様! ご勘弁を!」
「さぁリクオ! そろそろ行くわよ。あなたも遅刻しちゃうわ」
「う…うん……」

 姉さんに手を引かれて立ち上がり、そのまま手を繋いで家を出る。後ろからは見送りの雪女たちの声に混じって、青田坊たちが啜り泣く声が聞こえた。



「なまえ姉さん、ボクここからバスだから」
「ええ、気を付けてね」
「あの…ボクなら大丈夫だから……青田坊たちの事、あんまり怒らないで」
「そうね。その判断はお祖父様に任せましょうね」
「……わ、分かった(2人とも気の毒に)」


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