よく晴れた午後、広い芝生の庭の中で大きな犬とともに走り回る愛娘。…絵本なんかで有りがちなその風景が、今まさに俺の目の前に広がっている。

「お父さん、見て見て!」
「ああ…転ぶなよ、なまえ」

 そう言ってサングラスをかけ直す。メイドが運んできたばかりのアイスティーを飲み干し、グラスに新しいものを用意させる。そろそろ遊び疲れて戻って来るであろうなまえに、アイスココアも用意させた。
 しばらくパラソルの下で仕事の書類に目を通していると、小さな足音と犬の鳴き声が近づいてきた。顔を上げれば、額に汗を滲ませたなまえがこちらを見ていた。

「ずいぶん汗かいたな…なまえ、満足か?」
「うん!」
「…そうか。ほら、冷たいココアがある」
「わあ、ありがとう!」
「ああ」

 満面の笑みで小さな手を伸ばすなまえにココアを渡し、こぼすなよ、と頭を撫でてやる。
 向かい側の椅子に座って夢中でココアを飲む娘の姿に思わず口元が緩むが、明日までに確認しなければならない書類の事を思い出し、手元に視線を戻すのだった。


 俺は仕事もあって、四六時中傍にいてやる事は出来ない。だが、お前が寂しくねぇように、こうしてお前との時間を増やしてはいるが…

 お前にこの気持ちは、愛は、伝わっているか?


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