※標準語ヒロイン
「…ちょっと、侑士!」
「……ん、何やねん…」
部活の休憩時間に木陰で気持ち良く寝ていれば、ぱたぱたという足音とともに聞こえてくるなまえの声。今ええ夢やったのに…もう……。
「休憩終わり。侑士早くっ」
「あと3分」
なまえは俺と同じクラスで、俺らテニス部のマネージャーでもあり、そこそこ人気もある自慢の双子。……なんや、けど。
「しょうがないな、侑士は……あうっ」
「………」
渋々立ち上がった俺の手を引きながら、小石に躓くなまえ。繋いだ手を咄嗟に引いて、抱き留めてやる俺。まあ、見ての通りこの子はちょっとドジや。可愛いもんやけどな、この程度なら。
「しゃあないな、なまえは」
「…む」
ついさっきの自分の言葉をそのまま返されて、なまえは顔を赤くした。
「休憩、終わりなんやろ? 早よ行かんと、跡部が輪舞曲で怒るで」
「輪舞曲で怒るって何…」
「ん。手」
呆れ気味のなまえに手を差し出すと、怪訝そうに見つめてくる。
「何、その手」
「俺らがもしケガした時に、マネージャーがすでにボロボロやったら困るやろ」
「ちょっ…どういう意味?」
「転ばぬ先の侑士や」
「………」
「何か反応してや」
手は取ってくれたものの、なまえが始終微妙な顔をしていたのは言うまでもない。
「侑士、なまえに何かしたのか? さっきから凄い微妙な顔で侑士を見てるぜ」
「聞くな岳人」
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