「なまえ、さっき何食ってたんだよ!」
「へ?」
「とぼけたって無駄だせ…口のまわり見ろよ!」
「え、あ!」

 隠れて岳人の分のおやつを食べたのがバレてしまった。口に食べかすが付いていたとは…油断した。目の前の岳人はもちろん怒っている。岳人、今日のおやつ楽しみにしてたし…無理もないか。

「岳人ごめん、本当にお腹空いてたの」
「……」

 じっとこちらを見つめる岳人の目は少しだけ涙ぐんでいて、ショックの大きさを物語っていた。

「か…買って来ようか、新しいの」
「ん、いい」

 見つめたまま即答されてしまう。えっ、どうしたらいいの。

「………」
「…………岳人…?」

 岳人は冷蔵庫へ向かって歩いていき、何かを持って戻ってきた。そのままソファへ座ってそれを食べ始めて……って、あれ…?

「あ! 私のアイスっ…」
「なまえだって俺の食っただろ!」
「うっ」

 そして岳人は目の前で、私が楽しみにしていたアイスをうまいうまいと言いながら完食した。もう岳人のおやつには手を出さないと誓った、とある午後。


 ささやかな仕返し
 私にとっては倍返し


「…岳人、美味しかった?」
「あれ異常に美味くね? もしや高かった?」
「……景吾からもらった」
「…マジ?(跡部の奴、俺にはくれないのかよ)」


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