「くしゅんっ」
「あー、こりゃ風邪だねィ。なまえ」
「そんなー……」

 がっくりと肩を落とす私は少し前からくしゃみが止まず、今日もくしゃみを連発していたら、兄に風邪だと断言されてしまったのだ。しかし明日は友達と遊園地。寝込むわけにはいかない。

「お兄ちゃん、治して」
「そりゃ無理でィ。ほら、薬」

 薬と水を手渡され、この薬は苦いから嫌だと突き返すと、黙って飲めと口の中に薬と水を流し込まれた。苦みに顔を歪ませていると、再び口に何かを押し込まれる。

「飴?」
「口直しでさァ。それ好きだろィ?」
「……うん」
「早く治せよ、なまえ」
「……はい…」

 優しく微笑んで言われ、我が兄に不覚にもときめいてしまう。いつもの兄からしたら、今目の前にいる兄は何か裏がないかと疑ってしまうくらい、怖いほど優しいけれど……素直に嬉しいから、甘えておこうと思う。



「今風邪うつされたら困るんでさァ」
「え?」
「副長の座まであと1歩だからねィ」
「………(土方さん逃げて!)」


[ back ]