「謙也」
「ん、何や? なまえ」
「…終わった?」
「聞くなや」

 今日で全教科のテストが終了した。私は全く分からず、謙也に必死に聞いた問題さえテスト本番ではまともに解けずじまい。謙也自身もそれほど良い出来ではないらしく、テストの事は聞くなと怒られてしまった。

「ごめんね、謙也」
「何が?」
「解けなかったの。謙也が教えてくれた問題…」
「あー…まぁ、俺も解けてへんし。俺の教え方も分かりづらかったやろ?」
「ううん。ありがと」

 笑ってお礼を言うと、少し顔を赤くした謙也に髪をぐしゃぐしゃと撫でられ、ぼさぼさにされる。

「何やねん、いきなり! なまえに礼言われたのなんか、めっちゃ久々やで?」
「…謙也照れ「てへんわ! 断じて照れてないです」…何で敬語?」
「……あんなしおらしく礼言う事滅多にないやろ。驚いたわ」

 頭をガシガシと掻きながら、なんや恥ずかしいからこの話止めにしようや、な!と必死な謙也に思わず吹き出した。
 謙也とこんなに笑ったのも久々だし、照れた謙也も久々に見られたし……終わったテストの事なんて、もういいか。



「そういえば…なんで謙也さっき恥ずかしがってたの?」
「……秘密」
「何それ! 双子の私に隠し事?」
「まぁ、ええやん」
「……むぅ…」

(ちょっと可愛くてドキドキしてもた…なんて、言えるわけないやろ!)


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