俺の娘のなまえは、とにかくよく笑う。今も俺の隣で、一緒にお笑い番組を見ながら楽しそうに笑っている。もちろん、お笑いだけやない。普段もいつでもニコニコしてて、可愛い自慢の娘や。

「なまえ、そんなにコレおもろいか?」
「え? うん。あははは!」
「………」

 お腹を押さえて笑うなまえに、少々疑問を抱く。この芸人が、なまえにとってはそんなに面白いんやろか…?
 第一この子ツボ浅いんや。生まれたときから家に頻繁に小春を呼んで、俺と小春で漫才やって笑わして育ててきたからな……普通は笑いに厳しくなるはずなんやけど、どうもツボ浅いんや、これが。

「あははは、う…っははは!」
「……」

 息詰まりかけながら笑っとる。悔しいなぁ、こんな笑われると。なんか嫌や。小さい頃から、俺と小春の漫才見たときが一番笑っていたのに。

「……ちょっと出掛けてくるから、なまえはそのまま待っててな?」
「? うん」

 不思議そうに首を傾げる娘を残し、俺は走って小春を呼びに行った。


 娘を笑わす笑いでは、負けられへん。


「あれ? 小春さん……と、お父さん?」
「ごめんなぁ、なまえちゃん。ユウ君が、俺らの漫才でなまえを笑わすんやって聞かへんの」
「え」
「ちょっと付き合うたってな?」
「なまえ、よう見とけ! あないな芸人に負けへんでー!」
「………」


[ back ]