「なまえ姉ちゃん、なまえ姉ちゃん?」
バタバタと足音を立てて家の中を走り回るのは、私の弟の銀時。
「なぁに、銀時」
「この苺大福、食べていいか?」
「…どこから出したのよ、それ」
「れ、冷蔵庫」
銀時が差し出したのは、2つの苺大福。冷蔵庫に入ってた…って事は、どちらも私の物なんだけどな。銀時はキラキラと目を輝かせて、こちらを見ている。食べていいよって言われるのを期待しているのね…きっと。
「仕方ないわね…いいわよ、食べても」
「ほんとか!?」
「本当だけど…私の分は残しておいてよね、1つ」
「うん、分かった」
小さく頷くと、我慢の限界だったのか、銀時はガツガツと苺大福を食べ始めた。そして2つ目を握りしめる。
「ちょっと、残しといてって言ったじゃないの!」
「あ…」
ばれたとでも言いたげにこちらを見る銀時から苺大福を取り上げ、急いで食べた。
「油断できないなぁ…銀時は」
「……ちぇっ」
そっぽを向く横顔に負けて、仕方なくさらに半分を分けてやるのだった。
「なまえ姉ちゃん、これも食べていい?」
「…それは隠してたお煎餅…!」
「うまいぞ、これ」
「ああ、食べちゃった! もう…銀時…!」
「ご、ごめん……つい…」
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