俺がいつもより少し遅れて帰ると、もうすでに家族の食事が済んでいた。残してあった俺の分の料理を温めて食べていると、向かい側に姉さんが座る。

「おかえり、貞治」
「ああ…ただいま。姉さん」
「遅かったね」
「部室の片付けがあって、少しな」
「お疲れさま。私も何か食べよっかな、お腹空いちゃったのよ」

 にこにこと笑いながら冷蔵庫からプリンを出して、また俺の向かい側に座る。次に姉さんが発する言葉は、"おいしい"の確率100%だ。

「おいしいー!」
「やはりな」
「え、何?」
「いや」

 姉さんは分かりやすすぎて、当ててもあまり面白くないな。……ああ、今度乾汁にプリンを入れてみよう。そうしたら姉さんも試飲してくれるに違いない。

「貞治」
「…ん?」
「口元が緩んでる。何考えてるのよ」
「いや…何も」
「嘘ばっかり。またあの怪しい薬作ってるの?」
「怪しくない、あれはれっきとした健康的なドリンクだ」
「やっぱり作ってるのね。今もそのドリンクの事を考えていた確率、1000%!」
「………」

 しまった、墓穴だったか。あんな簡単な誘導に引っ掛かるとは…。まぁ、相手が姉さんでなければ、引っ掛かる確率は0%だが。そんな事を考えている間に、姉さんはプリンを食べ終えて部屋へ戻っていった。
 俺はといえば、乾汁にプリンを入れる事で頭がいっぱいだった。



「越前。ちょっとこれを」
「…何スか、コレ…茶色いっスよ」
「乾汁・プリンリミックスだ」
「………遠慮するっス」

「貞治、私のプリンー!」
「ん?」
「貞治が持ってった確率100%!」
「驚いたな、当たりだ」
「もう…怒る気失せたわ」


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