昼食の時間。今日は校内の売店も閉まっていて、全学年が弁当持参だ。もちろん俺も例外なく弁当だ。いつも弁当は双子の妹であるなまえが作っていて、その出来は周りのやつらからも分けてほしいとせがまれるほどだ。

「あれっ? 仁王、弁当箱ピンクにしたのかよぃ?」
「ん?」
「ふふっ…本当だ。なまえとお揃いかい?」
「あ……あー…」

 今日はテニス部の部室で食べる事になり、弁当を広げてみると、皆から指摘されて弁当箱が違う事に気付く。ピンク色のそれは、幸村の言う通りなまえのものだ。もちろん中身もなまえのもの。成長期真っ只中な上に朝練もこなした俺にとっては、少なすぎる。

「やってくれたのぅ…なまえのやつ」
「間違えたのかい?」
「そうらしいのぅ。ちょっと交換してくるぜよ」
「ああ、行ってきなよ」

 幸村たちに見送られ、弁当を包み直してなまえのクラスへと向かう。教室の戸を開けると、すぐそこになまえがいた。その手には、同じく弁当箱を持っている。青く大きめのそれは、正しく俺の物だ。

「ごめん雅治、お弁当包むの間違えちゃった!」
「まったく…ほれ、お前さんの弁当じゃ。早くそっち渡しんしゃい。今日は特に腹が減ってるんじゃ」
「あ。はい、これ。ごめんね?」
「ん」

 弁当を受け取って部室へ戻ろうとすると、くいっと制服の裾を引っ張られる。振り向くと、なまえが俺を見上げていた。

「何じゃ」
「今日ね、いつも一緒に帰る友達が彼氏とデートだから…一緒に帰っていい? 部活が終わるまで待ってるから!」
「分かった」
「…ありがと! 後でね」
「おう」

 頭を一撫でしてやり、なまえがひらりと手を振って教室へ入ったのを確認してから、部室へと戻った。



「仁王、今日はなまえと帰んのかよぃ?」
「ん? ああ…まあ」
「ふふっ。まるで恋人同士だね」
「………え」
「手なんか繋いで」
「…離しんしゃい、なまえ」
「やだ」
「……なまえに彼氏が出来ない理由が分かった気がするぜぃ」


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