俺は今、日本へ来ている。しばらくアメリカだ何だとあちこち飛びまわっていたが、リョーマも居るようだし、久々に少しからかってやろうと思う。…っと、からかう前にあのチビ助にも紹介してやらねぇとな、こいつの事。

「なまえ、こっちだ。こっち」
「まって、パパ」

 後ろからは、小さな女の子がついてくる。ラケットを持たせているんだが、なまえにはやっぱりデカすぎるみたいだな。一応テニスも、少しくらいは教えている。さすが俺の娘だけあって、筋も良い。

「お。あった…越前」
「えち、ぜん?」
「おう」
「…おなじ名前」
「そうだな。同じだな」

 柔らかい髪をくしゃりと撫でて、中へと入っていく。すると、テニスをしている音が聞こえてきた。

「こっちか…なまえ、行くぜ。ほら、手出せ」
「ん」

 小さい手をしっかりと握って歩いていくと、テニスをしているリョーマの姿を見つけた。ちょっと見ねぇ間に、また形が様になってやがる…上手くなったか、もしかして。ああ、早く試してやりたい。なんて考えていると、リョーマがこっちに気付いた。

「なっ、アンタまた…」
「おう! 久しぶりだな、チビ助」
「…その呼び方やめてくんない?」

 昔の通りに呼びかければ、案の定ムスッとした顔で答えてくる。するとなまえが、テニスボールを拾い上げてリョーマへ手渡した。

「お兄ちゃん、ボール!」
「……サンキュ。………誰、この子」
「ああ。俺の娘だ」
「娘…?」
「越前、なまえ!」

 なまえがリョーマに小さな手を差し出し、よろしく、と挨拶をする。リョーマもその手を取って軽く振ると、へぇ、と声を漏らした。

「アンタの子どもでも、ちゃんと挨拶できるんだ」
「…本っ当生意気な奴だな、お前」
「お兄ちゃんもテニスするの?」
「…も?」
「なまえはテニス上手いぜ? 俺の娘だからな。何なら試合でもやってみるか?」
「……面白いじゃん」

 と言っても子ども相手、しかも女の――そう考えたのか、まったく力を入れずになまえの相手をしていたチビ助は、なまえ相手に連続で3ゲームを落としていた。

「…嘘だろ」
「だから言ったろ? 上手いんだって」


 思わぬライバル


「ほらほら、もうちょい本気出さないと負けちまうぜー? チビ助!」
「うるさいな…ハンデだし。これからだよ」
「お兄ちゃん、はやくー」
「ほら。早くサーブしてやれよ、リョーマお兄ちゃん」
「………アンタ本当うるさい…」


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