「薫ー!」
「あ? ……なまえか」
「部活終わったら一緒に帰ろうって、約束したでしょ! 待っててよ!」
「…そんな事言ったな、そういえば」
「もう!」

 フシュー!とまるで猫の威嚇のような音を出すこの女は、俺の双子のなまえだ。おそらくその音は、俺の真似だとでも言うんだろう。

「薫の真似ー!」
「………フシュー…」
「ほら、似てる!」
「似てねぇよ」

 きっぱりと言ってやると、後ろから冷やかしの声が聞こえてくる。犯人は言うまでもなく――。

「登下校も一緒かよ、マムシのくせに」
「どーも。なまえ先輩」

 …桃城と越前。こいつら、俺がなまえと居るといつも突っ掛かってきやがる。もっとも、俺が居なくてもなまえにベッタリしてやがるがな。

「あ、リョーマと武! どう、今日の部活の調子は。武は、足の方は完治? 癖になったりしてない?」
「大丈夫だって! 万が一また足に怪我したとしても、なまえが手当てしてくれんだろ?」
「桃先輩、なまえ先輩に頼りすぎっスよ」
「そうだよ、武。次に怪我したら、レギュラー入りが危な……ちょっ、薫?」
「行くぞ」
「え。ま、待ってよ…バイバイ、二人ともっ…!」

 桃城達との会話を聞いているのがだんだん不愉快になってきて、なまえの手を思い切り引いて走る。桃城が引き止める声が聞こえたが、もちろん止まりはしなかった。しばらく歩いて学校から離れた所で立ち止まると、後ろでなまえが息切れしていた。

「もう、いきなり…何なの、よっ!」
「………」
「薫?」
「……帰るぞ」
「…もう」

 ――言えるかよ。あいつらに少し妬いた、なんて。



「マムシのやつ…あれって」
「ヤキモチ、っすね」
「「結構可愛いとこあるじゃん」」
「明日これネタに出来るな、越前」
「っスね、桃先輩」


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